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+ No.4 + 「準備は抜かり無く」


作業に取り掛かる前に事前準備は抜かり無く、ということで資料探しから始めた。
まずは社内からと、以前AF7の図面を探し出した倉庫を捜索したところ
数回通ってようやくパーツリストと一部の図面だけ探し出せたのだが、肝心な整備要領書が見つからない。

パーツリスト

パーツリスト

なんと言っても最初にバラして確認したいのはシフトレバーが不動のトランスミッション、場合によっては
総分解なんてのも有り得るかもしれない。構造を把握しておかないと素人さんじゃあ手に負えないよ。
しかしパーツリストだけでは部品構成が判るだけで車体ならともかく駆動系となると構造がさっぱりで
とてもよろしくないんだけどなあ。
車関係の書籍を取扱う専門店へも問い合わせてみたのだが、もちろん在庫無し。さあどうする。

待てよと、気付いたことがあった。
三輪車AA27は“AE57”という型式のエンジンを積んでいるのだが、四輪車のAF3も初期は同じエンジンが
搭載されていたはず、ひょっとしたらの整備要領書はそのまま使えるかもしれない。
手元にあったAF3の整備要領書を開いてみると、AE57エンジン&ミッションの分解手順が解説してあり、
掲載されているミッションの写真は三輪車のと同じ。
これだ!ということで、すぐにコピー。



その他に用意できたのはカタログ、これは以前に原本を借用してカラーコピーしたもの。





さあて、この車はどんな構造なんだろう。
キャブレターはチョークバルブの代わりにソレックス式スタータを装備したシングルタイプ。
エンジンレイアウトは車体の真ん中に置いたミッドシップで、形式は水平対向
空冷2気筒OHV359ccの16馬力、トランスミッションは前進3段+後退1段のマニュアルで
縦置きに搭載し後2輪を駆動。
制動装置は後輪だけで“機械式内拡式”という二輪ドラムブレーキだそうな。
積載量は300kg積みだって。

気になるトランスミッションのところには“常時噛合及歯車摺動式”と書いてあるが、さっぱり判らん。
何せ今までミッションなんか分解したこと無いもんだから、一から勉強せねば。
断面図を見ると2軸式でシンクロ機構が無いようだが、これが俗に言う“ノンシンクロ”ってやつなのか。
ノンシンクロだと、たぶんバイクと一緒でドッグクラッチ構造となっているのだろう。

断面図

最近のマニュアル・トランスミッションには全てシンクロ機構が装備されていて、シフト操作すると
噛合う2つのギヤ(エンジン側とドライブシャフト側)がギヤチェンジ前に、一瞬で同じ回転になるのだ。
同じ回転でシフトチェンジできれば、「ガリガリ」なんてギヤ同士がぶつかる音がしない。
ノンシンクロだとそれをやってもらえないから、シフトチェンジの度に自分でこれから噛合う2つのギヤ
の回転を合わせてやらなければ、「ガリガリ」音だけじゃなく最悪はギヤが欠けちゃうからね。
自分で合わせる方法は”ダブルアクセル”や”ダブルクラッチ”だから、それのマスターは必須さ。
昔の人は車を運転するというより機械を操作する技術が今の我々より優れていたのかも。



さあて準備は整った、あとはいつから始めるかだ。よし、すぐやろう!と意気込んだまま、次回へつづく。

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