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「ふたたび」


いつの間にか作業部屋の片隅に、カバーを掛けて置かれていた謎の物体。
興味深々 カバーを持ち上げてみると、見覚えのある水色の車が鎮座していた。
あれ、何でここにあるのかな?なんか嫌な予感。
こいつは、「全国コニー愛好会」会長が愛知機械テクニカルフェアの時に
九州からトラックで持ち込んだAF3コニーだっけ。

AF3コニー

確かこの車は自走できるしナンバーまで取得していると聞いた気がするが、
傍で見るとかなりボロい・・・、ってまさか!
「そう、直しといてねって言い置いて帰っちゃったんだよ。」
いつの間にか現れた発起人氏の怖い一言。でもそれを引き受けたわけじゃあ・・・
「という事で、レストアの第二段はこのAF3のボディー復元をやる事にしよう。」だって。

また大変だろうけど、まあ良いか。
今回は車検を取得しているという事だから機関部分はやらなくて良いし、
それに前回のAF7はボディーをプロに任せちゃったからね。
ちょうど良い機会か、なんて楽観的に考える事にしたのだけれど
懲りないねえ、それでいつも痛い目に遭ってるのに。

取り掛かる前に、この車の素性を知らないと。発起人氏が聞き出したお話。
800年もの昔、壇ノ浦の合戦に敗れ源氏に追われて逃れた平家の落人が
人目を忍んで隠れ住んだと伝わる場所が全国各地に点在する。
宮崎県にある椎葉村もそんな平家落人伝説が伝わる場所の一つだそうだ。
その山深い村には曲りくねった国道が貫いており、その国道沿いにあった
一軒の崩れかけた建屋の中に風雨を凌いで眠っていたAF3を、
ここを偶然に通り掛かった愛好会の会長が発見したそうな。
もちろん会長の目には一目でそれが、博物館はもちろん個人所有車としても
残されていない初代コニーであるのを見逃すはずはなかったわけね。
それから入手するまで数年の月日が流れ、さらに車検取得が完了したのは
発見から10年近くの歳月が経過していたとか。
恐るべき執念!

AF3型と言えば、それまで3輪車専門自動車メーカーだった愛知機械工業が
昭和34年に初めて4輪車へ進出し市販した最も古いコニー。

クリックで拡大します。

基本構造は、ミッドシップ、ウイッシュボーンサス、ラック&ピニオン式ステアリング。
AF7編で詳細説明したけど、初代コニーから同じだったわけだ。


エンジンも水平対向2気筒空冷式で同じ、但しAF7とは違うタイプらしい。


エンジンブロックに「giant」の文字!

AF3発売の数ヶ月前に発売された軽三輪トラックAA27型ヂャイアント・コニーと
同じエンジンを載せた前期モデルらしい。
因みにこのころ時代は三輪から四輪に切り替わる過渡期だったため、AA27という
軽三輪車を発売しながら同年末にすぐ軽四輪AF3を発売せざるを得なかったようだ。

1. 仕   様   書
車 両 全 長 2,985 mm
〃  全 巾 1,285 mm
〃  全 高 1,515 mm
ホイール・ベース 1,955 mm
ト レ ッ ド 前輪1085、後輪1085
最 低 地 上 高 155 mm
標 準 荷 箱 長 1,160 mm
〃   巾 1,110 mm
〃   高 390 mm
標 準 積 載 量 350 kg
乗 車 定 員 2 名
エンジン型式 強制空冷4サイクル水平対向2気筒
内径 × 行程 58 mm × 68 mm
総 排 気 量 359 C.C.
圧  縮  比 6.9
最 高 出 力 16 p.s/4,800 r.p.m.
最 大 ト ル ク 2.62 kgm/3,500 r.p.m.
始 動 方 式 始動電動機式(日本電装 28000-073-0)
点 火 方 式 バッテリ式(12V24Ah)
点 火 プ ラ グ B6(NGK)、W17(Denso)、45G(日立)
点 火 コ イ ル 日立 CIZ-01
ディストリビューター 日立 D212-01
潤 滑 方 式 ギヤポンプ圧送式
気  化  器 三国商工 BD26
燃料タンク容量 15 リットル
潤 滑 油 容 量 オイルパン 1.7 リットル
ク ラ ッ チ 乾式単板式
トランスミッション 常時噛合及歯車摺動式
変 速 段 階 前進3段、後進1段
ブ レ ー キ 足動油圧式内拡式全四輪
タ イ ヤ 寸 法 5.50-13-4PR(前後共)
 性  能
最 小 回 転 半 径 4.3 m
最 高 速 度 64 km/hr
登 坂 能 力 14°20′
制 動 距 離 5 m(於初速35 km/h)
燃 料 消 費 率 27 km/リットル(於平坦舗装路)
最高速度は64km/h!これならスピード違反は無いね。


3速M/T、これも軽三輪車譲りか。さすがにまだフルシンクロじゃないけどね。
シフトレバーの位置は、コラム。発売当初はフロアシフトだったけど、居住性向上のため
発売後すぐにコラムシフトへ変更されたんだってさ。

奇跡!室内に車種プレートが残っていた。
軽自動車 運輸省認定番号1073 ヂャイアントAF3

ヂャイアント?調べてみたけど、カタログや解説資料にはこの車はコニーとしか表記されてない。
届け出時はヂャイアントで、発売前に名前を変えたのかな?
手を付ける前に解ったことはそれぐらいだけど、どちらにしろ自社製品だもんね。



さて、やりますか。

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