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「お仲間、救出」


さあこれから始めようかというところに、ある情報が飛び込んできた。
「グッピーを見つけたのですけど」
あらら、また話がAF3のレストアから逸れそうな雰囲気。
まあいいか、ついでだからAF8編第1話では語れなかった
グッピー大救出作戦の全貌を、ここで明らかにしちゃおうか。
ということで、サブタイトルとして「AF8編第0話:想ひでの伊予紀行」。

電話の相手は、前年の秋にコニー愛好会との親睦会を行った折、
兄弟で特別参加していた古い車好きな青年であった。
場所は愛媛県松山市、状態は良好、先方は譲っても良いと言ってくれているとのこと。

まだ復元されてない車があるのにもう1台増やしちゃって良いの?という忠告もあったけど、
グッピーは我社にとって大事な歴史の一部、AF3、AF7、と共に揃える夢が
なんとかなりそうな費用でという事になれば断る理由はない。
しかし相場から考えると超破格なその数万円を、すぐに捻出できるのだろうか。
カンパ金の残りは僅か数千円だし、会社から特別に購入資金が出る可能性は低いし、
そもそもクラブ活動の年間予算なんかを遥かに超えてる金額だからねえ。
それでも、「うーん、なんとかするよ」と発起人氏。

購入資金源が確定していないけど、「グッピーちゃん里帰り計画」は立てておこう。
決行日は一週間後の週末、出費を押さえるために会社のトラックを借りて我々が自ら行くしかない、
コニーを運んだ積載車の日産アトラスを出動させるか。
名古屋から四国まで行くとなると瀬戸内海を渡る方法が勝負、費用を掛けられないから
最も安価な方策を選択するとなると、まず鳴門大橋は却下、フェリーで渡る最も安いルート
となる和歌山-徳島の南海フェリーを使う最短距離コースに決定!

最短距離でも、かなり遠いなあ。

ところが出発直前になり、グッピーちゃんを連れ帰るトラックが変更となってしまった。
車両搬送用にロングボディー仕様となっているアトラスではフェリー料金が割高、
社内にあるもう少し小さいトラックに替えたそうな。
えー、これしかなかったの!

バネット・トラックじゃん!

ちょっと待てよ、これにグッピーが載せられるのかな。
大丈夫、机上検討(?)の結果では積載可能だってさ。

C22sv F8sv
グッピーって小さいんだねえ。 しかし人力で持ち上げて積むのかな?
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そして決行当日になり、発起人氏よりスケジュールの詳細が発表された。
金曜日の夕方に会社を出発して夜中に和歌山でフェリー、それから走って土曜日の午前に松山、
午後に折り返して夜中にフェリーで戻って、日曜日の午前に会社へ帰着。
・・・って、これでは0泊3日の強行軍じゃないかい!
まあ実際は無理をしない筈で、どこかに一泊するに決まってるさ。松山と言えば道後温泉があるしね。
そんなピクニック気分の同乗者を助手席に詰め込んで、愛知機械製のC22バネット・トラックは
予定通り金曜日の18時頃に港工場を出発したのであった。

購入費用はどう工面したのかな?同乗者の呑気な問い掛けに、
発起人氏は「なんとかしちゃったよ。」と一言。
結局、どうしたかを教えてくれなかったから未だに謎なんだけど、後日伝わってきた話では
社内の部課長から温かい支援を受けたみたい。

一般道を250km走って和歌山港に着いたのは深夜24時頃、慌しくフェリーに乗船し
枕だけが転がっている大広間の2等船室で暫しの休息。
波に揺れつつ横になり、眠りに落ちようとしたところで到着を告げるアナウンス。
午前3時、真っ暗闇の中を徳島県の小松島港を後にしたのであった。

助手席で舟を漕いでいる同伴者を乗せたバネットトラックが松山市内に入ったのは土曜日の7時頃、
約束の時間までにはまだ6時間もあるから、どこかで仮眠したいねえ。
シートが倒せれないトラックのキャビン内では腰が痛くて眠れない、うろうろ走り回って見えてきたのは
ピカピカの松山空港、ここの軒下をちょいと借りますか。出発ロビーの待合席を占領して休息。

そろそろ行くかと、今回の情報をくれた青年と合流するために三津浜港へ出発。
予定通り13時に到着した広島発のフェリーから現れたのは、びっくり!マツダR360クーペであった。
かわいい青い車に先導されて着いた先は車の解体屋さん、オーナーとの挨拶もそこそこに
早速グッピーを見せて欲しいとお願いすると、案内されたのは廃車に廻りを囲まれた一角。
珍しい車なので見つからないように取り囲んであるんだね、足取りも軽く廃車の山を乗り越えた。
が、そこで見たものは・・・

あああぁぁぁ・・・、
遠路はるばる取りにきたのに!
屋根は潰れフロントガラスは喪失、
室内も荒れ放題の見るも無残な姿

しかし発起人氏の意志は固かった。
このままにしておけば間違いなく潰されてしまうから、なんとしても連れ帰ってやらねば。
オーナーにもその熱意が伝わって半額に「まけて」もらうことで交渉が成立したのだが、
さてさてこの雨の降る中、どうやって廃車の山から取り出したら良いのか?
もうこうなったら仕方がない、お金が掛かるけどクレーン付きのトラックをレンタルして吊り上げるしかない、
どこか貸してくれるところを教えて下さい。
そして幸運なグッピーちゃんは、ユニックで吊り上げられて無事バネットトラックの荷台に収まったのであった。



おっと、跡に散らばるゴミと泥の中に大事な物が落ちてるよ。千切れたエンブレムの一部や腐り落ちた
テールランプはしっかり確保。
ゴミの中から出てきた宝物

パソコン通信の話に盛り上がるオーナーと青年にお礼と別れの挨拶をしたのは18時頃、来た道を辿り
小松島港24時出港のフェリーに乗って、東名阪をちょっとだけ使って港工場へ辿り着いたのは、
朝日も眩しい日曜日の午前7時であった。
3日間の総決算は、走行距離957km、費用が40757円+グッピー購入費、延べにして37時間か。
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あーあ、ホントに宿泊なしの0泊3日、食事も途中で買った菓子パンだけ、道後温泉も前を通過しただけ、
「坊ちゃん」縁の地を観光するなんて夢のまた夢となってしまった。

でも苦労して入手したんだから、まずは観賞に耐えられるレベルにしてあげたい。
早くグッピーに取り掛かれるよう、現在復元中のAF3の進捗を急ごうか。

松山から連れ帰ったグッピーの復元については、「AF8グッピー編」を見てね。



つづく

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