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+ 第10話 + 「復活の準備」



さて数年間も動かしていなかったコニー、再整備はエンジンを目覚めさせる事から。
火花とオイルと燃料を確認してスターターを回すと、6年ぶりなのに相変わらずあっさりと始動。
変質した燃料でキャブが詰まらぬよう燃料は抜いておいたのだが、「冷却水の無い空冷エンジンは
長期間の放置後でも簡単に復帰させられるよ」と“知恵袋氏”が言っていたのを実感。
しかしエンジンが掛かっても燃料ポンプからのガソリン漏れは相変わらずなので、こいつを直さねば。

燃料がポタポタ、漂うガソリン臭
燃料がポタポタ、漂うガソリン臭

機械式燃料ポンプが壊れると電磁ポンプへ交換しちゃうのが定番らしいが、以前AF3に電磁ポンプを取付けたところ
どうやら燃圧が高かったらしくガソリンが噴出し恐い思いをしたので、今回はオリジナル品の完全修理を目指したい。
以前コニーのオーナーさんから譲ってもらったダイヤフラムの未使用品(!)、それを使おうと部室の保管箱から
探し出して梱包の“プチプチ”から出してみた。ん?なんだかベタベタするぞ。

“プチプチ”にも黒くベタ付いた跡が残っている

ベタベタしているのは黒い部分で、3枚重ねの布材をコーティングしていたゴムが溶け出しているみたい。
確かに未使用品であっても加硫されてから40年以上も経っていればゴムが正常な状態であるわけ無いけど、
取り敢えず使ってみましょうと交換のため燃料ポンプをバラそうとしたのだが、分解方法が解らない。
構造図を見たところ圧入されたピンを抜けば良いらしい事が解ったが、ピンの反対側が袋状となっているため
一旦圧入されたピンは抜けないんだけど。

よれよれのダイヤフラムを交換しよう このピンを抜かねば、さあどう抜くか
よれよれのダイヤフラムを交換しよう このピンを抜かねば、さあどう抜くか

さて困ったぞ、ピンを抜かない限りは組替えられない。えーい、袋状の部分に穴を空けてピンを叩きだしちゃうか。
貴重な純正の燃料ポンプにドリルで穴を空けるなんて、オリジナル保持に拘る部員が居たら卒倒しちゃうかも。
穴を空けてピンを抜いてダイヤフラムを組替えてからエンジンへ組付けて始動、漏れが止まってくれなかったので
燃料ポンプの分割合せ面の平面出し研磨をしたうえでシール材を塗ってみたのだがやはり漏れは止まらない。
うーん、と皆で考え込んでいた時に一人のクラブ員が合せ面ではなく裏側の空気穴から燃料が漏れ出ているのを発見、
可動している燃料ポンプの内圧を逃がす空気穴はダイヤフラムによって燃料と隔てられる構造なのに、なぜそこから出てくる?
隔てられていないという事は燃料がダイヤフラムを透過してるってことかい、ではあのベタベタのゴムが機能してないのか。

純正の燃料ポンプを加工中、勿体無い? 空気穴から燃料が出るはず無いんだけど
純正の燃料ポンプを加工中、勿体無い? 空気穴から燃料が出るはず無いんだけど

透過の防止方法として3枚重ねの布材の間にシール材を塗ろうかとの話しも出たが、剥れて詰まるリスクが高いため却下。
じゃあ黒い部分だけ耐油性のゴムで作り直してしまえって事で、カシメ部分を外してシート材から切出して作ったゴムへ
交換してから燃料ポンプへ組込んで試したところ、30分以上エンジンを回し続けても漏れてこなくなった。
とうとうネック部品の解決方法を発見出来た、最初の復元以来ずっと悩まされ続けられてきたがこれで解放されそう。

左が耐油性ゴム品、右はベタベタ新品 燃料ポンプへの組込み完了 遂に漏れが止まってくれた!
左が耐油性ゴム品、右はベタベタ新品 燃料ポンプへの組込み完了 遂に漏れが止まってくれた!

さてもう一つの大きな問題であるブレーキの液漏れだが、今回もマスターシリンダーとホイールシリンダー4ヶ所全てから。
ブレーキってフルードを入れたら定期的に使用しないとシリンダーが侵されて錆による“虫食い”状態になるそうな、
こいつは一度入れてしまうと抜いておいても駄目らしい。
ホイールシリンダーは前輪側2ヶの腐食が酷かったため新品のフォークリフト品を使用。→流用伝説を参照してね。
後輪側は腐食した内径部の研磨とピストンカップの交換だけで様子を見ることとなった。

古い部品なので在庫少との噂が
古い部品なので在庫少との噂が

ただマスターシリンダーは手強い、前回のブレーキ復元時には内径部を研磨しピストンを入替えて使用してみたのだが
1~2年程で漏れが再発してしまい、その後は内径を再研磨しても二度と復活しない状態に。
こうなったら流用できる新品に交換するしか無いのだが、最近のブレーキシリンダーはブレーキ2系統化に対応した
ダブルタイプばかり、シングルを見付けても車体への止め点が横になっていて、縦止めのコニーに取付けるには
車体への穴空け&不要穴の埋めが必要となるから、シングルで縦止めを探しているのだが見つからなくて。
前回も見付けられず研磨とピストン入替えで誤魔化したんだよねえ、誤魔化せない今回はなんとかしたいのだが。
と、クラブ員の1人からある提案が。「これはどうですか」と持ってきたのがシングルの縦穴品。
見つかったんだ、これって何の部品なのかな。「クラッチシリンダーです、Zの」。クラッチ?

上がコニーのブレーキ用、下がZのクラッチシリンダー。
シングルで止め点が縦なのは一緒、但しもし使うなら
ブレーキ用の油圧SWをどうするのか要検討ですな。

クラッチシリンダーって大丈夫かい、それに個人用に保有している古い車種の部品みたいだけど使っても良いのかな。
「容量が少し小さくなるけど機能的には問題無いかと。それに部品共販へ問い合わせたらまだ購入できるみたいなので」
じゃあ安心して使っちゃおう、止め点の取付けピッチが合わないのは下側の穴を長穴に加工することで対応し取付け完了。

下側の穴をリューターで拡げ中 繋ぎのブレーキパイプも作り直し
下側の穴をリューターで拡げ中 繋ぎのブレーキパイプも作り直し

フルード入れて踏んでみると、ちょっとストロークが長めだが良い感じ。車を押して動かし踏んでみると、ブレーキが利く!
手こずったマスターシリンダーも、これで解決か。



もうあとは屋外へ持ち出して走らせるだけ、久々に運転できそうな次回へつづく。

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